9 地層処分技術に関する研究開発

地層処分の技術と信頼を支える基盤的な研究開発を推進

図1 地層処分システムの基本概念

図1 地層処分システムの基本概念

 

図2 地層処分技術に関する研究開発の実施体制と成果の反映先

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図2 地層処分技術に関する研究開発の実施体制と成果の反映先

 


地層処分は、原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物などを、何万年にもわたって人間の生活環境から隔離するための対策として、国際的にも共通した最も実現性の高いオプションです。今後の原子力政策の動向に関わらず高レベル放射性廃棄物などは既に発生しており、その対策への負担は将来世代に先送りするわけにはいきません。現在の我が国の方針では、使用済燃料の再処理により発生する高レベル放射性廃液を、ガラス原料と混ぜ、高温で溶かし合わせてガラス固化体にします。これを、30〜50年程度冷却のために貯蔵した後、金属製のオーバーパックに封入した上で、地下300 m以深の安定な岩盤の中に、粘土を主成分とする緩衝材で包み込んで埋設します(図1)。原子力機構では、実施主体である原子力発電環境整備機構による処分事業と国による安全規制の両面を支える技術基盤を整備し、地層処分技術の信頼性を支える研究開発に取り組んでいます(図2)。

北海道幌延町の幌延深地層研究センター(堆積岩を対象)では、地下の研究施設を活用して、実際の地質環境における人工バリアの適用性確認等の研究課題に取り組んでいます(トピックス9-19-2)。また、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)の協力を得て、アジア地域の地層処分に関わる国際研究開発拠点として地下の研究施設を利用した研究開発を国内外の機関で協力しながら推進し、研究開発成果の最大化を図るために「幌延国際共同プロジェクト」を進めています。岐阜県土岐市の東濃地科学センターでは、土岐地球年代学研究所において、地質環境の長期安定性に関する研究を実施しています(トピックス9-39-4)。瑞浪超深地層研究所(花崗岩を対象)では、坑道の埋め戻し(2022年1月完了)後の地下水の状態を確認するための環境モニタリング調査等を実施しています。

茨城県東海村の核燃料サイクル工学研究所の研究施設では、人工バリアのシステム挙動や放射性核種の移動特性に関する実験データなどを基に、地質環境の長期安定性に関する研究の成果や地下の研究施設での研究成果も活用して、地層処分システムの設計や安全評価に必要な技術の開発を進めています(トピックス9-59-6)。

これらのような研究開発で得られた成果により、知識マネジメントシステムを用いた知識ベースの拡充を継続しており、第3期中長期目標期間(2015年度〜2021年度)における研究開発成果の取りまとめをCoolRepR4(CoolRep:ウェブを活用した次世代レポーティングシステム)として公開しています。また、2022年9月30日には「地層処分技術に関する研究開発報告会 −第3期中長期目標期間の成果取りまとめ(CoolRepR4)について−」を開催し、CoolRepR4の内容を中心に第3期中長期目標期間の研究開発成果を報告しました。

(CoolRep: https://kms1.jaea.go.jp/CoolRep/index.html

(地層処分技術に関する研究開発報告会: https://www.jaea.go.jp/04/tisou/houkokukai/houkokukai_r04.html