7 高速炉研究開発

高速炉サイクル技術に関する研究開発

図7-1 高温ガス炉の特長

図7-1 高速炉サイクル技術

高速炉サイクル技術は、高速炉で発電しながら燃料を燃やし、使用済燃料を再処理して抽出されるウラン、プルトニウム等をリサイクルして再び高速炉で燃やす原子力システムです。

 

図7-2 プラント過渡熱流動ナトリウム試験装置

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図7-2 プラント過渡熱流動ナトリウム試験装置

「冷やす」技術をより確実にするため、緊急時に炉心を冷やすための装置の試験を開始しました。

 

図7-3 炉心を模擬した試験体

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図7-3 炉心を模擬した試験体

電気ヒータを組み込んだ模擬炉心を、ナトリウムの自然循環で冷やす試験を行います。

 


高速炉サイクル技術は、原子力を長期にわたって用いる上で必要となるウラン資源の利用効率を飛躍的に高める可能性を有しており(図7-1)、これを社会に受け入れられる技術とすることが目標です。東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故のように、放射性物質を大量に放出する原子力災害のリスクを極限まで低減できる高速炉サイクル技術を目指し、自然災害なども含め、シビアアクシデントに至る要因を幅広く想定してその発生防止と影響緩和を強化した設計とすることで、安全性を強化した概念を創出します。

 

●プラント過渡熱流動ナトリウム試験開始

「冷やす」性能をより確実なものにするため、ポンプなどの動力機器に頼らない方法で、事故時に炉心を冷却する技術を開発しています。大洗のプラント過渡熱流動ナトリウム試験装置(PLANDTL)(図7-2)ではナトリウム冷却高速炉の炉心を模擬した試験体(図7-3)を用いて、自然循環で炉心を冷却する試験を開始しました。ここで得られた成果により、非常用の電源が完全に失われた条件でも、確実に炉心を冷やすことができるようになり、ナトリウム冷却炉の安全性向上に貢献します。

 

●各分野の研究開発成果紹介

高速炉でも安全性を確保するための方策は軽水炉と同じです。もし事故が発生しても原子炉を「止める」「冷やす」放射性物質を「閉じ込める」を徹底することにより、1Fのような過酷事故を防止すること、原子炉の性質をしっかり把握し、故障・トラブルを防止するために保全をしっかり行うことが目標です。

高速炉の安全性に関して、私たちは世界各国と協力して世界標準となる安全性の要件と、それを実現するための設計ガイドの作成を進めています(トピックス7-1)。これにより、世界中のナトリウム冷却高速炉の安全性を向上することが目標です。

原子炉の性質を把握するための研究として、プルトニウムとウランを混合した酸化物燃料の性質を測り、原子炉中でのふるまいを予測するための研究を進めています(トピックス7-27-37-4)。これら成果により、原子炉の安全性や性能を予測する精度が向上します。

故障・トラブルを防止するための保全技術の開発も行っています。系統・機器の安全に対する重要度を科学的に考慮した、保全のためのプログラムを構築する研究を行っています(トピックス7-5)。この研究により、安全を確保した上で合理的な検査が可能となります。この成果はアメリカ原子力学会の基準として認められ、世界の高速炉の安全性向上に貢献しています。また、冷却系機器の一つである蒸気発生器について、保全のための伝熱管検査技術の開発も行っています(トピックス7-6)。この技術により、伝熱管のより微小な欠陥を検出できるようになり、事故・故障を未然に防止することが期待されます。

「閉じ込める」を徹底するための研究として、事故時にナトリウムが建物のコンクリートと接触した場合の現象を評価する研究を進めています(トピックス7-7)。この成果によりナトリウムとコンクリートの化学反応の影響を正確に評価できるようになり、「閉じ込める」性能をより確実なものにできます。